ピッチ

つめたかった。

わたしはいままで忘れていた、秋や冬の道路はつめたい。 知らない土地にふらりと行って夜中に歩くなんてことはよろこんですることだったし、いましていることの一つでもある。小腹が空いたから雑にコンバースのスニーカーを履いて外に出る、わたしはひゅうひゅうと夜を探検する。壊れかけのコンバースを履き潰す覚悟でひたすらに。見飽きた街とは違っていて冷えるのはわかっている、それでもさむかった。まだ10月なのにほおが痛くなるくらい。掠れて痛くなるくらい。

小石に躓いて、風呂上がりのすべすべとした肌がかたいアスファルトにあたって、ぺたり。そして思う、冬がふんわりと抱えてる希死念慮の寒さは、いつだって忘れた頃にやってくるのだと。