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この春卒業していく先輩は学科で課される卒業論文のほかに卒業制作(裏)として同人誌を作っていた。本好きな先輩の周りには同じように活字を愛する人々が集い、古本市に出かけたり、ブックカフェに行ったりするのだ。先輩と一緒に買った本のうちどれくらいを読んだか、自らの浅ましさと醜悪さを実感する。


同人誌は好きな本の書評を集めたものであるらしい。私も寄稿しないかと誘われて、実際『皇帝の新しい心』『悪魔祓い』『和文英訳の修業』を紹介しようか迷った末に原稿を書きはした。けれども提出するか迷っていたら先輩が印刷したものを持ってきた。自分の人生の間の悪さであったり、人に期待させて何もなせなかったり、なにひとつ成長していない。先輩に渡されたものはいまでも玄関先に置いてある。