nobody

  イヤホンをして首の裏を掻くと陶磁器を触っているときと同じような音がする。すっす、さらさら、かさかさ。そういった乾燥を乾燥で擦り合わせるような音がする。かたいものや中身の詰まったものを叩くときと同じ音がする。

  そうなるとわたし自体がまるで入れ物のように思えてくる。どこまでがわたしなのか怪しくなってくるから、それこそ首の裏あたりに浮かぶ曖昧な離人や霊体のような気すらしてくる。3人称視点のゲームと同じ感覚で人生を生きているから、わたし自身の身体をオブジェクトにぶつかったりぶつからなかったり適当に操っているのは画面の中の何物かを操るのといったい何が違うのかわからない。

  自分にも肉体はあって隙間なく肉が詰まっていることがおそろしい。