6月

  大学に書類を提出した夏の日、キャンパスにいる人間ひとりひとりに生活があって「やって」いて「やって」いくのを急に実感して死にたくなったのを覚えている。自尊心はとうの昔に失われていたと思っていたのに、最後の最後に縋りついていたこれからの絶望が見えるほど薄いプライド、遂に砕け散ったように感じた。

  あらゆるものが進展どころか変化すらしないまま、捻り出したモラトリアムは破滅に向かう、私は中退する予感がした。教授と面談したときに困ったように吐き出された台詞、頑張ってください、それに返す言葉がないから曖昧な薄笑いを浮かべるのは惨めだ。冷房が効いた小さな部屋なのに肩甲骨の間を汗が伝っていて気持ち悪かった。私は落ちて外れた。

  恋愛感情を同一性や存在証明に利用していた、メサ・コンに浸って承認欲求を満たしながら自慰をしていた。恋人に別れを切り出されて終わりにしようと言われたあと何をしたらいいかわからなかった。自分は誰にも必要とされずに一生を終えるんだろうなんて悲劇のヒロイン気取りで大学から2時間かけて歩いて家に帰った。その辺に落ちていたカフェイン錠を酒で流し込んだら夏なのに凍死しかけた。